大人の上質な車の扱い方 セオリー50

欧州自動車 戦略との戦い

3つのパラダイムシフト

国内自動車産業は3つのパラダイムシフトに直面している。 それは、 ①新興国への新車需要のシフト、 ②クルマのコモデイテイ領域の拡大、 ③国際競争力の格差の縮小だ。 この変化はリーマンシヨ ツクを契機に表面化し、 一 段と加速している。自動車需要を新興国が牽引する傾向が 一 段と顕著にな っている。 リーマンシヨ ツク以降、 新車消費は先進国から新興国市場ヘと完全に主導権が移行している。 図表ー ' 2は、 弊社が集計する毎月の世界の新車販売台数を季節調整して年率換算した数値のトレンドである。 経済危機から6年が経過し、 米国が過去最高水準に回復し、 先進国の新車需要はようやく危機前の水準ヘと回復した。 一 方、 新興国はさっさと過去最高を更新し、 当時の200%と倍増のレべ ルに到達、販売規模も先進国を上回るようになつてきた。これまでの新興国の新車需要は、 中国市場の膨張が主導することで進ん できたが` 2020年までの5年問は、 インド、 インドネシア、 中南米などの成長が加ゎ ってくる。 その先も大幅な人口増加に支えられ` 新興国の新車需要は旺盛に推移することは間違いないだろう。 新興国の新中間層人口は20ー0年のm ・ 6億人から2020年に幻 ・ 5億人、2030年にはお ・ 6億人に膨張する。 この増大する新中間層のうち、 中国、 インド、 インドネシアの3カ国が帥%をしめる。誰もが実感することだろうが、 クルマの企業問の性能格差は大幅に縮小してきた。 製品性能を差別化する のが難しく、クルマがコモデイテイ的な製品になってきていることの証左である。 もちろん、 カラーテレビのような本格的なコモデイテイとなるわけではな いが、 価格を支配することも容易ではなくなり、 結果として、 コス卜競争力を構築して従来とは異なる収益性を確保するビジネスモデルづくりの重要性が高まつてきていることは疑ぅ余地がない。

規制強化と標準化を一体で進める狙い

2。ー4年までの過去m年間の販売台数成長率は、 卜ヨタとGMが伸び悩むなか、 Vwは200%増、 ルノー ・ 日産連合も同ー46%増、 5位の現代自動車グループは同232%成長した。 この3社に共通するのは欧州の標準化戦略を積極的に取り込み、 いゎゆる欧州自動車戦略にの って競争力を急速に引き上げてきたことである。 収益力では確かにトヨタが秀でていることは間違いない。 しかし、 }」れを理由に国内自動車産業の国際競争力を過大評価することはできな欧州戦略には3つの切り口がある。 第ーに、 競争領域と非競争領域を仕分けし、 サプライヤーとの水平分業を進めることだ。 この結果、 ドイッにはボッシユ、 コンチネンタル、 ZFなどの非常に競争力を持ったメガ ・サプラ イヤーが形成されてきている。 第2に、 クルマの基本構造や設計プロセスの標準化を図る、 オープン ・ イノベーシヨンを推進していくこと。 第3に、 燃費規制ゃ安全規制を世界に先駆けて推進し、 その規制をコンセンサス ・ スタンダードとして、 先進国に留まらず新興国をも囲い込んでいくことだ。規制強化とそれをクリアできる技術の標準化を官民が 一 体とな つて推進するところにカギがある。 クル マの燃費規制や安全規制は、 ほとんど欧州が先導してルールづくりが進む。 その中に` 閏係が良好な中国、 インド、 ブラジルと いう代表的な新興国が囲い込まれ、 コンセンサス ・ スタンダード化されていくのだ。 メガ ・サプライヤーの生産規模は飛躍的に拡大し、 互換性の高い標準部品が国際的な競争力を増大させる循環を生み出す。同時に、 標準化を進めるための設計手法である 「 モジユール」 を多用したクルマの開発 ・ 設計プロセスを進化させている。 このモジユールを含めた設計プロセスの変化に関し ては、 第2章で詳細に説明するので、 ここでの説明は割愛する。 モジユール設計を多用した標準化を進め、 メガ ・サプラ イヤーが活躍できる領域をさらに拡大させる。 欧州車メーカーは` モジユールを組み合わせながらクルマを設計する開発が主流となっている。メガ ・サプライヤーが設計 ・ 製造する標準化の進んだシステム部品を活用することで、 コス卜競争力を引き上げ、 苦手な製造 . 品質の課題を克服することが可能となる。 そして、 ブランド、 サービ ス、 ーCT、 ーVーなど、 競争領域と定めた要素で高度な マネジメント. スキルを発揮し` 収益性を確保していくのが欧州車メーカーの基本戦略である。VWは` この欧州戦略をいち早く取り入れたリーダーである。 つくり方から儲け方まで` クルマのビジネスモデルを革新してきた。 環境. 安全性能への社会的要求に応え、 自勤車設計の複雑化、 エレクトロニクス化` ーT化などに柔軟に対応できる強みを有する巨大メーカーに成長している。20ー4年の実績では、 トヨタ自動車はかろうじて世界販売台数トツプを維持したが、 2位のvWとはわずか叩万台の差に過ぎなかつた。 2007年では` 卜ヨタが9ー7万台、 vwが625万合と、 トヨタは300万台も勝つていた。リーマンシヨ ックを挟んで、 一 気に追いつかれてしまつたのだ。 20ー5年には、 VWが世界販売台数トツプに躍り出ることが濃厚である。